公益信託 サントリー世界愛鳥基金
文字サイズ変更
検索
TOP > バードウォッチングをはじめよう 探してみよう,鳥のフィールドサイン
12月 探してみよう,鳥のフィールドサイン 鳥の「落としもの」を観察
鳥がいなくても,鳥を楽しめる

 鳥がいることを知る方法として,最もわかりやすいのは,もちろん直接その姿を見ることです。しかし,それ以外に鳥が「いた」ことがわかる方法があります。例えば羽が落ちていたら,その場所に持ち主の鳥がいたことがわかりますし,使われた後の巣を見つければ,そこで鳥が繁殖していたことがわかります。今回は,鳥の姿を見ずに鳥の観察を楽しむ方法を紹介します。

足跡を残しながら水辺を歩くクイナ。よく見るとクイナのほかにセキレイ類の足跡もある(左写真の左下,ひとまわり小さな足跡)
フィールドサインとは?

 足跡や糞など,生き物がその場にいたことを示す痕跡を「フィールドサイン」と呼び,鳥のフィールドサインには羽,足跡,糞,古巣,卵の殻,食痕などがあります。バードウォッチングでは鳥そのものに触れることは叶いませんが,落ちているフィールドサインであれば,手に取って間近で見ることができます。
 そしてフィールドサイン観察のおもしろさは,「落とし主が何で,そこで何をしていたかを考える」ことにあります。例えば落ちている羽がどの鳥のどの部位か,なぜそこで拾えたのかを調べたり,食痕から何の鳥がどんなものを食べていたかを考えられます。すべてのフィールドサインで答え(=落とし主や落ちていた状況)が見つかるとは限りませんが,発見→観察→姿が見えなくなったら終わりではなく,その鳥の暮らしぶりまでじっくり時間をかけて思案できる分,フィールドサインの観察は奥深いものです。

モズのはやにえ(左:バッタ,右:トカゲ)。フィールドサインの中にはある種に特徴的なものもある
地面に特徴的な浅いくぼみがあったら,それはスズメが砂浴びをしてできたフィールドサイン
フィールドサイン紹介 ①羽

 鳥ならではのフィールドサインであり,基本的に鳥は1年に1回,すべての羽を生え変わらせるため(換羽),見つける機会は比較的多いです。実際に手に取ってみると,多様な色と形,細かい構造などに魅了され,拾った羽をコレクションする人もよくいます。落ちている状況としては,水辺で岸に流れ着いていたり,公園などで落ち葉がたまっているところに紛れていたり,多くの鳥が集まるねぐらで見つかるパターンがあります。ほかに珍しいケースとしてタカなどの猛禽類がほかの鳥を捕食した痕跡,つまり食痕のフィールドサインから拾える場合もあります。
 羽を拾ったら何の鳥が落としたかを調べたくなります。しかし多くの場合,それはあまり簡単ではありません。なぜなら1羽の鳥の中にも「初列風切」「大雨覆」「上尾筒」「尾羽」「体羽」など形や色の異なるさまざまな羽が生えており,まずはどの部位の羽かを見分けることが必要になります。さらに,全身の色のイメージと羽の色のイメージが一致しないことがよくあります。例えばキビタキは美しい黄色の姿が印象的な鳥ですが,よく見ると黄色なのは腹部や腰といった部分で,仮に翼の羽を拾ったとしても黄色いところはありません。こうした難しさから,羽を識別する専門の資料もいくつかありますので,そういったものを活用するのもよいでしょう。もちろんオナガの長い水色の尾羽のような,落とし主もその部位もすぐわかる羽もあるので,最初のうちは特徴的な羽を選んで拾ってみることが楽しむ第一歩です。

砂浜に打ちあがっていた羽。おそらくセグロカモメなどの大形カモメ類のもの
キビタキ。印象的な黄色の羽は胸~腹や腰などで,翼の羽に黄色はない
海岸で拾ったムナグロの尾羽。模様が特徴的だが,識別には拾った場所や季節,大きさなど,さまざまな情報が必要
羽の識別に特化した本もあるので,羽集めに興味がわいたら入手してみよう
オナガの尾羽(上)と初列風切(下)。特徴的な模様のおかげで識別は簡単
拾った羽をきれいに並べてコレクションすることもできる(写真はコガモ
フィールドサイン紹介 ②古巣

 羽ほどは見る機会は多くないですが,巣も鳥らしいフィールドサインです。特に冬は木々の葉も落ちて,「あれ,こんなところに巣があった」と目につく機会も増えます。一般的に「鳥の巣」と聞いて思いつくのは,木や草を編んだり,積み重ねたりしてできたお皿のような形の巣でしょう。ほかにもチドリ類がつくる地面の簡単なくぼみだけの巣,キツツキ類の木に穴を開けてつくった巣,カワセミ類の地中に穴を掘って作った巣など,巣の形状は鳥によってさまざまです。鳥が使い終わった古巣はその場所で鳥が繁殖した証拠であり,その形や場所から種を絞り込むことは可能です。
 なお,古巣の観察では鳥の繁殖をじゃましないことが大原則です。春~夏は多くの鳥にとって繁殖期なので,仮に古巣のようなものを見つけても,再利用の可能性があるので近づかないほうがよいでしょう。冬であれば見つけやすいのでオススメですが,キジバトカワウのような通年繁殖する鳥がいますし,猛禽類の中には同じ巣をくり返して使用する鳥もいるので注意が必要です。

冬になって葉が落ちて,樹上のカラスの古巣が見えるようになった
木に開けられたコゲラの古巣
土がむき出しの崖に空いている穴はカワセミが使っていた古巣だという
採集してきたメジロ の古巣。コケや草の繊維,鳥の羽などを使ってしっかりつくられている
フィールドサイン紹介 ③糞,ペリット

 色や形状を楽しむものではなく,衛生的な観点からも収集などには向いていないですが,鳥の生活を知るうえではとても大切なフィールドサインです。糞はその場所に鳥がいたという確実な証拠になります。多くの鳥は体を軽くするために,飛び立つ前に糞をすることがあります。例えば鳥が止まっている場所の周辺にたくさんの糞があった場合,そこはその鳥にとってお気に入りの止まり場所だと推測できるため,仮に飛び去って見失ったとしても,同じ場所で待てば戻ってくる可能性は高いです。また多くの糞がまとまって落ちている場所は,何らかの鳥のねぐらになっていることがあります。
 ペリットはカワセミ類やタカ類など一部の鳥しか残さないフィールドサインで,これは骨や毛といった消化できないものをかたまりにして吐き出したものです。落ちている場所やサイズから落とし主を絞り込むことができますが,ペリット自体が非常にもろいので,見つけてもすぐには手に取らず,まずはじっくり観察することがおすすめです。ペリットの中に含まれる昆虫の殻や魚のうろこ,動物の骨などから食べているものを見分けることができれば,その鳥の食性についての情報を得ることができます。

カワセミが止まっていた草の周りには大量の白い糞があった。おそらくここがお気に入りの止まり場所なのだろう
カワセミのペリット。詳しく観察すると魚の骨やエビの殻が混じっているのがわかる